なぜ悪いことは重なって起こるのか

姉が旅行先の韓国で高熱を出した。なんとか帰りの便には乗れたというので、母が車で成田空港へ迎えに行った。姉は家に着くなり玄関から自分の部屋まで絵に描いたようなフラフラさで移動して、そのまま寝てしまった。熱は40度近くあった。

その晩に簡易検査キットで行ったコロナウイルスの抗原検査では陰性で、両親とも胸を撫で下ろした様子だったが、40度出てるんだからコロナでなくても苦しいのは苦しいだろうと思った。姉は小さい頃から旅行先ではしゃぎすぎて熱を出したことが何度かあって、今回もきっとそれだというようなことを母はしきりに言った。

翌日病院で検査すると陽性の結果が出て、やむなく姉は自宅で隔離されることになった。感染したことはもちろん、旅行の目的だった好きなアイドルグループのグッズとかは韓国で全然見つからなかったし、どこも人でごった返していて、要するに散々だったらしい。

それから2,3日するとその姉を看病していた母も熱を出して、母は姉の部屋で寝起きすることになった。とりあえずレトルトのお粥やスープはるさめを買ってきてそれを食べてもらった。母が病気で寝込むことは今まであまりなかったうえ、姉の部屋に布団を敷いて寝ている様子には家の造りが変わったような印象を受けて、なんとなく家が家でないような感じがした。

リビングで父と夕飯の惣菜を食べながら、悪いことには悪いことが重なるものだという迷信について考えた。独立の事象が生起する確率どうしがなにか超自然的な力によって連係すると考えるのはばかげたことだと思うが、確率はさておき、次に父や僕自身が感染する場合に備えておくべきだろうとは思った。家族全員が発熱するのが最もまずいシナリオなので、僕は母や姉と顔を合わせる時はもとより、父と話す際にも注意すべきだと思った。父か僕がすでに感染していて、ウイルスの潜伏期間にある可能性は十分にあったからである。

僕の実際に想像していた悪いことというのはこのくらいだったから、電車で嘔吐したという連絡を彼女から受けたのはまさに寝耳に水だった。学校で頭痛がして、早退する帰りの電車で2,3回吐いたという。悪いことは重なるものだと思わされた週だった。

今では姉も母も全快というわけではないが回復して、大事にならなくてよかったと思っている。彼女は吐いた次の日から元気だとか言って、病院にも行っていないので原因はわからない。僕はMRI検査を受けた方がいいと思う。